今まで生きてきた中の体験や考えたことなどを綴ります。 あくまでも個人の見解です。 北風剛としての東南アジアの民話も少々。 英語やタイ語の翻訳はいい加減なのであしからず。
2017年8月19日土曜日
利口な猿
ある日、一匹のサルが木から木へと飛び移っているときに、しっぽに棘が刺さってしまい、じぶんではどうしても抜くことが出来ませんでした。
サルは、困った挙げ句、いつもお世話になっている床屋に行って、このしっぽに刺さった刺を抜いてくれと頼みました。うまく抜いてくれたら、お礼をするからと床屋に言いました。
床屋は、サルの望みをかなえるために、かみそりを使って棘を抜こうとしました。棘を抜くことは出来ましたが、床屋は、ついうっかりサルのしっぽの先を少し切り落としてしまいました。
サルは、もちろん怒って、床屋に俺のしっぽを元通りにするか、もしそれが出来ないのなら、おまえの大切なかみそりをよこせと叫びました。
床屋は、もちろんしっぽを元通りにすることは出来ませんから、ここは、喧嘩をしても勝ち目はないからと、大切なかみそりを、このサルにくれてやることにしようと、サルにかみそりを渡しました。サルは、かみそりをもらって、儲かったと喜びました。
その帰り道、サルは、年老いたおばあちゃんが、薪を切っているところに差し掛かりました。サルは、おばあちゃんに向かって、このかみそりを使えば、もっと簡単に薪が切れるよと、かみそりを渡しました。おばあちゃんは、かみそりを使って薪をきろうとして、かみそりの刃を折ってしまいました。サルは、それを見て、おばあちゃんに怒りました。
おばあちゃん、かみそりを元通りにするか、おばあちゃんの薪を全部俺にくれるかのどちらを選んでくれといいました。おばあちゃんは、折れたかみそりを元通りにすることは出来ませんから、サルに謝りながら一生懸命集めた薪を全部このサルにあげました。
サルは、薪を背負って歩きながら、「どうだい俺はたいしたものだろ。一銭のお金を使うこともなく、こんなにたくさんの薪を手に入れることが出来た。」と心の中で喜びました。
しばらくして、今度は、もう一人のおばあちゃんが、美味しそうな魚料理を作っているところに出くわしました。サルは、おばあちゃんに料理をごちそうしてくれといってもくれるわけがないから、その料理をごちそうになるための作戦を考えました。なんてたって、「俺は利口なサルだから、こんなおばあちゃんを騙すことぐらい簡単なことだ。」と思いました。
サルは、おばあちゃんのところに行って、おばあちゃん、もう火が消えかけているから、俺の持っている薪を少し使ったらどうかといいました。おばあちゃんは喜んで、サルからもらった薪を使って料理を続けました。おばあちゃんは、サルの持っていたすべての薪を使ってしまいました。サルは、怒って、おばあちゃんの作っていた料理を、その償いに全部持っていってしまいました。
サルは、急いで帰ってこの美味しそうな料理を食べようと、家に向かいました。
ちょうどその時、一匹の恐ろしい犬が、サルの持っている料理のいい匂いを嗅いで追いかけてきて、突然サルに襲い掛かりました。
サルは、驚いて、急いで木に登って、難を逃れましたが、料理は、犬に取られてしまいました。
おいしそうに料理を食べている犬を見ながら、サルは、「世の中には、利口なやつがたくさんいる。自分1人だけが、利口ではない。」と悟りましたとさ。
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