小学校低学年の頃、「疳の虫が強い子」だと、祖母が将来を心配して、夏休みに、御嶽講に参加したことがありました。
疳の虫というのは、簡単に言えば、かんしゃく持ちで、よく言えば、感受性が強い子供ということです。
講というのは、同じ目的を持つ集団というような意味で、アジアでは、どこの国にも、お金を融通し合う講があります。犯罪のネズミ講の講も同じような意味です。
御嶽講というのは、霊山、御嶽山に登るための講で、地方にいる先達さんに連れられて、御嶽山に登り、途中にある多くの霊場めぐりをします。
出発前日の日の出に、参加者全員で近くの海に行って、身体を清めます。
そして、木曽福島までバスで行って、登山を始めるのですが、登山というよりもハイキングでした。といっても3000メートルを超える高さですから、それなりに疲れました。特に下りは、大変でした。
一応、ひのき笠と金剛杖で一緒に行ったおばあさんたちは、白装束でした。
登っていくときには、金剛杖をつきながら、「六根清浄、お山は晴天」と唱えます。
六根とは
眼根(視覚)
耳根(聴覚)
鼻根(嗅覚)
舌根(味覚)
身根(触覚)
意根(意識)
で、それらを清めながら登っていくわけです。途中には、多くの霊場や滝があり、先達さんが、なにやら、呪文を唱えて、同行者の健康を祈ってくれます。
先達さんに霊が乗り移るというクライマックスを覚えていますが、霊が乗り移った先達さんが、わけのわからないことをつぶやくのですが、同行者の中に通訳さんがいて、それをわかりやすく説明してくれるのです。
あれは、子供ながらに、??でした。
わたしは、一種の高山病なのか、途中、何度も鼻血を出して、山小屋では、頭痛に悩まされました。
夏山でも雪渓が残り、天候に恵まれたので、気持ちのいい登山でした。
御嶽山といえば、生薬「お百草」です。
お腹の調子がよくないときの万能薬で、真っ黒の板状の生薬で、必要な分だけ割って飲みますが、とにかく苦かった。
あと、雪解けのわき水を金剛水と呼んで、ありがたく水筒に入れて持ち帰りました。100年腐らないという話で、それを時々、盃程度飲ませてもらいました。
ネパールに行ったときに、やはり、高山病なのか、頭がボ~っとすることがあり、そんな時に、急に御嶽山の山小屋で見た景色を思い出し、ああ、地球上では、どこにいても、つながっているんだなあと感じました。
山岳信仰は、ネパールやブータンやチベットなどと共通点もあるわけで、金剛杖もインドから伝わったのではないかと思います。
三叉戟を持つシヴァとパールヴァティー
ちなみに、先達さんのアドバイスで、ユキノシタの葉っぱの絞り汁が、「疳の虫」にはいいとかで、それから、しばらく、ユキノシタ責めに苦しみました。
その効果があってか、かんしゃくを起こすこともなく、中学に入る頃から、多少はマシになることが出来ました。