時々目まいがしたり、吐き気がしたりする原因がわからないので、いろいろな検査を受けましたが、神経症の特徴のひとつとして、異常なしという結果が出ると、藪医者だとか、検査がおかしかったとか、自分で勝手に病気であるはずだと決めつけます。
検査結果で異常がないのは、病院のせいかもしれないと、病院を変えて、また検査を受けます。
そうして、何カ所かの病院で検査を受けたときに、「あなたの心臓には先天的な欠陥がある。」と告げられました。
女医さんとの会話は、英語でしたが、専門的な医学用語がわかるはずもなく、図を書いて説明をしてくれました。
「EKG検査の結果、あなたの心臓には、RBBB(right bundle branch block)という欠陥があります。心臓にいっている神経は3本ありますが、そのうちの1本がブロックされています。でも、右側は2本の神経が通っているので、そのうちの1本がブロックされていても、問題は無いでしょう。」
今なら、スマホでもパソコンでも検索一発で、ある程度のことはわかる時代ですが、当時は、自分で調べたくても調べる方法がありませんでした。
これは、ショックでした。子供の頃から活発で、元気いっぱい、運動も好きでしたし、長距離走なんかも問題なく出来たのに、心臓に先天的な欠陥とは。
いくら問題は無いと思うと女医さんがいってくれても、場所が場所で、心臓に欠陥といわれて平常心でいられる人は多くはないと思います。
まして、神経が弱っているときでした。
それから、どんどん、症状が悪化していって、夜中に息苦しくなって自分で救急車を呼んで病院に行くことも2回ありました。
もう死ぬかと思うくらい苦しくても、病院に着くと、急に楽になり、症状が消えました。これも、典型的な神経症の特徴とあとから知りました。
バスや電車に乗れば、閉所恐怖症のように、息苦しくなって、途中下車しないと耐えられませんでしたし、不眠症になったし、何を食べても味がしないようになっていきました。
高いビルの窓際に行くと、飛び降りたくなるのではないかと怖くて、窓に近寄れなくなったり、包丁が怖かった時期もありました。
一度、迷路に迷い込むと、症状はどんどん悪化していって、本当に鬱状態になってしまいました。
病院で出された薬の中には、余計に頭が重くなるような薬もあって、すぐに捨てましたが、正しい診察に行き着くまでは、本当に真っ暗闇でした。
特に午前中は、もう何をする気にもなれず、横になっているだけでした。
そうしたときに、たぶん、神経の病気だろうから、日本に帰って専門医に診てもらった方がいいとタイの医師にアドバイスしてもらい、日本に帰ったわけですが、精神科医からは、もしも心臓に不安があるのなら、一度専門医に精密検査をしてもらいなさいといわれました。
それで総合病院で検査を受けましたが、精密検査といっても、今から思えば、たいした検査ではなくて、心電図をとったり、トレッドミルというベルトコンベアーの上を歩きながら心電図などを調べる検査で、結果は、やはりRBBBでした。
その時に、医大の研修医たちが、ゾロゾロと検査の所に来て、医師から、この心電図を見て、何が問題かわかるかとか質問しているのを聞きながら検査を受けるのは、あまりいい経験ではありませんでした。
でも、検査の結果の説明で、やはり日本語での説明はわかりやすいですし、その先生のおかげで、ちょっと意識が変わりました。
というのは、RBBBで死ぬ人はほとんどいないし、よく考えて欲しいけど、誰でも、明日死ぬかもしれないし、長生きをするかもしれない。RBBBでも、100まで生きる人もいるんだから、余計な心配は要らないと思うとのことでした。
その話を聞いて、確かに、誰だって、心臓に欠陥があろうななかろうが、いつ死ぬかはわからないし、もうクヨクヨするのはやめようと思いました。
不安神経症だから、不安がなくなれば、症状はよくなります。
生きていく中で、不安のない人なんかいないわけですが、心配はOKでも心配しすぎはダメだってことなんですよね。
でも、生まれつきの性格はなかなか変わりません。
父の葬儀のあとに、脈が飛ぶことがありました。自分でもはっきりわかるくらい、脈は、一拍休み状態で、血圧計でも、ピッピッという音が、途中で止まり、このまま音がしないのではないかと不安になるくらいでした。
日本でも心電図をとってもらいましたが、やはりRBBBで、疲労から来る不整脈で心配は無いでしょうとのことでした。
この不整脈も数ヶ月続きましたが、バンコクお世話になっている医師が、トレッドミル検査などのあとに処方してくれたお薬で、症状は消えました。
心配性なので、日本から、携帯用の心電図計を送ってもらいました。
これを送ってもらってから、何度計っても異常なしです。
私の場合ですが、納得いくまで検査を受け不安を軽減させ、精神科の専門医から、お薬も処方してもらい、よく眠られるようになり、実家で、両親と生活したことで、徐々に鬱状態は消えていきました。
あと、自分では、よかったと思っていることは、開き直りで、なるようにしかならないから、まあ、いつ死ぬかわからないけど、適当に生きていこうと思ったことです。
人生、意外となんとかなるものですから、心配しすぎない方がいいですよと自分にも時々言い聞かせています。