2017年11月11日土曜日

不安神経症 その1 森田療法

海外での暮らしは、快適な部分もありますが、意識するしないにかかわらず、常にストレスもあります。

やはり、言葉が違うし、食事も違う、いろいろな習慣も違いますから、ストレス発散をしないとストレスはどんどんたまります。

一時、自分が神経症で苦しんだ経験から、お世話になった知り合いの精神科医にお願いをしてバンコクに来てもらい、邦人の相談会を企画したことがありました。

その時、日本人会に話を持っていって、協力をお願いしたときに、対応してくれた人が、こう言いました。

「タイにはストレス解消の場がいろいろとあるから、ストレスを抱えて病になる人はいないと思うよ。」と。

確かに、ゴルフにしてもきれいなおねえさんのいるクラブにしてもカラオケにしてもタイ式マッサージにしても、ストレス解消にはいいと思うし、タイは、安くて気楽に楽しめます。

しかし、その担当者も、日本人会内でのトラブルで、仕事を失い、髪の毛が真っ白になるくらい落ち込んだと聞きました。

精神的なストレスは、日々ストレス解消をしているから大丈夫だというほど甘くもないわけです。

わたしの不安神経症については、また、あらためて書くつもりですが、神経を病むと、本当に大変です。

まして、昔は、神経症とか、普通の人は知らないわけで、もうひとまとめに精神病、すなわち、キチガイ扱いでした。

ちょうど、日航の片桐機長の逆噴射事故があり、「心身症」という言葉がやっと登場した時代で、まあ、日本の心の病の夜明け的な時代でした。

私の場合には、迷路の中を彷徨いながら、この身体の不調の原因は何なんだろうと、検査を受けまくっていた時期と、やっと、原因は、身体ではなく、心にあるらしいと指摘してもらい、日本で、精神科に通った時期、そして、バンコクに戻って、今日まで、再発もなく暮らすことができている時期となります。

そんな中、勇気を振り絞って、帰国し、父に頼んで精神科に連れて行ってもらったとき、親不孝ばかりな息子でも、心配そうに見ていた親の愛を感じました。

心が落ち着ける環境に自分を置くことも、心の病には大切なことだと思います。

精神科の先生は、とりあえず、「森田療法」という本を読んでみなさいとアドバイスをしてくれました。医大内にある書店で売っているからと教えられ、その足で、父の運転する車で医大に行って本を購入しました。

「森田療法」の本の最初には、いろいろなタイプの神経症で苦しんだ人の経験談が書かれていて、苦しんでいるのは自分だけではなかったんだとか、同じような人もいるんだなとか、それまで、重くどんよりしていた気分が、ちょっと軽くなったような気がしました。

森田療法というのは、1919年に森田正馬先生により創始された神経質に対する精神療法のことです。

神経質が発症するのは

1.ヒポコンドリー性基調:いたずらに病苦を気にする精神的基調のこと。

2.神経質性格:弱力性(内向性・心配性・過敏症・心気症・受動的 )と強力性(完全欲・優越欲求・自尊欲求・健康欲求・支配欲求)を合わせ持つ性格。

3.精神交互作用:ある「感覚」に対する「注意」が強くなるとその「感覚」が強くなり、「感覚」が強くなるとさらにまた「注意」が強くなること。注意と感覚の悪循環。

4.思想の矛盾:かくあるべしと思う「思想」とそうではない「事実」が反対になり矛盾すること。理想の自分と現実の自分のギャップ。

5.生の欲望:向上・発展しようとする欲望。

といっています。

自分を振り返ってみても、自分の性格は、完ぺき主義だし、心配性だし、すぐ病気ではないかと思うし、死ぬことが怖いし、まあ、なるべくしてなった神経症だったかもしれません。

「森田療法」の基本は、「あるがまま」なんだそうで、あるがままに自分も自分を取り巻く環境も受け入れなさいということらしいですが、わたしは、本を読んで、なんか、まじめすぎるような気がして、実践はしていません。

実践の基本としては、早寝早起きの規則正しい生活で、感謝の心と奉仕の実践で、心の満足を得るといった感じのようでした。

早寝早起きや規則正しい生活は、健康生活の基本です。しかし、現代社会では、そんなに健康生活ばかりでは、生きていけないし、おもしろくないです。

だいたい、健康によくない食べ物はおいしいですし、健康的でない生活は楽しいことが多いです。

病気になったら、まあ、とりあえず、規則正しい生活を実践し、調子がよくなったら、いつまでも修行僧のように生きることもないと思いますね。

感謝の気持ちとか奉仕活動は、必要ですが、出来る範囲で十分だと思います。何事も無理を続けることは身体によくないです。

いずれにしても、「森田療法」は、長いこと、いろいろな人たちから支持されているようなので、一度本を読んでみることはお薦めします。

私の場合には、いろいろな人が同じような悩みで苦しんでいることを知ったことが最大の収穫でしたし、迷路から抜け出るためのヒントも見付かりました。

心の病は、複雑だし、個人差もあるから、まずは、専門医に相談するのが一番です。ネットなどには、いろいろなことが書かれているけど、それがいくら正しくても、とにかく専門医に診てもらうことが大切だと思います。

その専門医にしても、自分に合う合わないもあると思うので、ちょっと違うとか違和感を感じたら、別の所で相談するのもいいと思います。

とにかく、あの様な苦しみから、1人でも多くの人が、抜けだされることを祈り続けています。