2019年11月20日水曜日

新未来党の戦略

今日の憲法裁判所の決定で、新未来党の党首タナトーンが下院議員の資格を失ったわけですが、憲法裁判所の前での記者会見後、すぐに車に乗ってサイアムスクエアーというチュラロンコーン大学の近くにある若者たちが集まるオシャレな一帯に街頭演説に出かけました。

今日の憲法裁判所の決定を批判するのかと思った人もいたようですが、新未来党のパンフを配り、憲法改正と徴兵制の廃止を訴えたそうです。

今の政府は軍とその支持者を中心とした連立政権で、野党はタクシン派など7党が中心になっています。

野党は、軍部の力を削ぐために憲法の改正を訴えています。

かってのタクシン派の支持者は、北部や東北部の農民たちが多かったのですが、新未来党は、バンコクを中心に若い世代、特に大学生の支持を集めています。

以前からタマサート大学に左翼や反体制派が多かったのですが、最近では、チュラロンコーン大学など、別の大学にも反体制派が増えています。

日本と同じで、新未来党のピヤブットに代表されるように教授などに左翼が多いようです。

以前のタクシン派の戦略は、貧富の差を利用した階級の分断で、バンコクなど都市部の富裕層が地方の貧困層を搾取しているといった共産主義者的な訴えでした。

しかし、タクシン派も同じ搾取する側だと気が付いてきているし、世界的に共産主義はすでに過去の遺物になっていて、支持者離れも起きてきているようです。

地方の農民もテレビやラジヲを信じる時代ではなく、スマホで検索をする時代です。

そこで、今度は、若い世代に対する人気取りとしての徴兵制の廃止運動を始めたようです。

タイには徴兵制があって、21歳の男子は、くじ引きで徴兵されます。

日本にも赤紙という言葉がありましたが、赤い紙を引けば徴兵、黒い紙だとめでたく徴兵免除です。

これが、タイ人の男子の人生の中では最大のイベントで、うまく兵役から外れればいいのですが、徴兵されると基本2年間の厳しい訓練の日々が待っています。

毎年話題になるのが、オカマちゃんたちで、中には、豊胸手術などを受けている人もいるので、そういった人たちは、兵役免除になります。

身長が160センチに満たないとか、持病があるとかいったことでの免除もあります。

あと、高校時代に「ロードー」といわれる軍事訓練制度が任意であって、それに参加した証明があれば、兵役は免除となります。

「ロードー」も軍隊での訓練ですから、なかなか厳しいモノです。ですから、裕福な家庭の子供は親が「ロードー」には参加させないことが多いそうです。

そして、タイ独特のコネで、徴兵を回避する人もいるとかいないとか。

徴兵にいった証明書とか、徴兵を免除になった証明書は、とても重要で、いろいろな機会にそれを見せなければなりません。

それは、公務員になるときとかパスポートを申請するときなどです。

この徴兵制が、タイの若者たちに不人気なので、徴兵制を廃止し、志願制にしようというのが新未来党のキャンペーンです。

もう一つ、タイでは、徴兵された新兵には、イジメやしごきがあったり、将官の家での下働きがあったりするのだそうです。

例えば、皿洗いとか掃除とか家畜やペットの世話とか、それがなかなか大変なんだそうで、新未来党は、そうした悪い昔からの慣習も廃止するといっています。

なかなかいいところをついた戦略です。

志願でどれだけの人材が確保できるのかわからないですが、そんなことは、どうでもいいんでしょう。

若者たちが、誰かさんたちの政争の具に利用されないことを祈ります。