「かりそめ天国」で養蜂の話が出ていて、昔、父親が、急にミツバチを飼い始めたことを思い出しました。
とにかく多趣味な父親で、魚釣りだけではなく、和船を漕いだり、網を仕掛けたり、定年退職後には漁師に弟子入りして、太刀魚とかサバなどを捕っていました。
鶏やヤギも飼っていましたので、私は、牛乳ではなくヤギの乳で育ったとも言えます。
花を育てたり、メダカを育てたり、インコやカナリアなど小鳥を育てたり、いろいろとやっていたので、それを無意識のうちに見て、いろいろなことを学びました。
父は、味噌醤油から、豆腐やこんにゃく、沢庵や梅干しや梅酒なども得意でした。
ミツバチは、煙を嫌がるので、専用のふいごの中に新聞紙を入れて火をつけ、不完全燃焼させた煙を吹きつけながら巣を開けます。
網のついた帽子のようなものをかぶって、手袋をして、ミツバチに刺されないようにするわけですが、注意しても多少は刺されてしまいます。
ミツバチは、ほかのハチと違って、一度刺すと、針を人間の皮膚に刺したまま、それを残して飛び去りますから、それで死んでしまうそうです。
刺されたところを見ると、針の上の部分にはスポイトのような膨らんだ部分があるので、そこをつかまないように注意しなければなりません。
そのふくらみの中には毒が入っているから、それをつまんで毒を体内に注入すると、かなり腫れて痛いです。
ふくらみの下の針だけの部分をピンセットなどでつかんで抜けば、ほとんど痛みもなく腫れたりもしません。
ミツバチの毒はさほど強くはないですし、何度も刺されているうちに、痛みも腫れも弱くなってきます。
巣の中には、ファイルケースのような感じの巣板が吊り下がっているわけで、それを引き上げてみると、その巣板の両側にびっしりと蜜蝋によってできた例のきれいな模様の巣が現れ、そこに蜜とか幼虫などが入っています。
その巣板を巣から出して、小さなドラム缶のような器具を使って蜜を遠心力で取り出すわけで、巣板は、一度に何枚も入れて、器具についたハンドルを回し、回転させて、蜜が底から流れ出す仕組みです。
採れた蜜には幼虫とかゴミとかも混ざっているので、きれいにして瓶詰にします。
季節によって、ミツバチが集めてくる蜜が違いますから、その季節にたくさん咲いている花の蜜が集まります。
ミツバチの敵は、病気や天候とか外敵とかいろいろとあって、運が悪いと、見事に全滅してしまいます。
基本的には、追い払ったりしないかぎり、近くの人を刺したりしませんが、近所の人から、洗濯物にミツバチのフンや花粉が付くなどの苦情はありました。
でも、添加物ゼロの蜂蜜やロイヤルゼリーを口にできるのは、なかなかの贅沢でした。
父から学んだことは数えきれないほどありますが、「備えあれば憂いなし」は、骨の髄までしみ込んでおります。
父の得意は電気関係でしたので、子供のころから父がいろいろなモノを修理するのを見て、専門の勉強をしたわけではないけれど見よう見まねで、簡単な修理などは自分でしています。
あと、父からの遺伝なのか、道具道楽というか、いろいろな工具とか道具を買ってしまいますから、家はガラクタがいっぱいです。