2020年6月9日火曜日

出口が見付からない その2

日本に帰るといっても、仕事もあるし、そう簡単に帰ったわけでもなかったですが、とにかく、日本に帰りました。

実家で父に突然、精神病院に行きたいと伝えたわけですが、父も母もさぞかし驚いたことだったでしょう。

でも、一言も詳細も聞かずに、私が調べた病院に車で連れて行ってくれました。

そして、私が診察を終えるまで車の中で父はじっと待っていてくれました。

精神科の先生は、私のくどい説明を黙って聞いてくれました。私としては、少しでも詳しい説明をと、まあ、必死だったわけです。

たまに相槌を入れるくらいで、本当に大丈夫かと思うくらい私の話を聞いているだけでした。

あとから思ったのですが、精神科の先生の仕事は、患者のくどい話をじっと我慢して聞くことなのかもしれないし、先生自身も、相当なストレスを感じながら仕事をしているんだろうなあと、もう大尊敬でした。

それで、診察の終わりに医師から、とりあえず、不安神経症だと思われるから、医大の図書館に行って「森田療法」の本を買って、読んでみなさいと言われました。

診察を終えて、父に医大に行きたいと伝え、連れて行ってもらいました。

医大の本屋さんを探して、そこで医師から言われた本を購入して帰宅しました。

実家では、買った本を読んで、予約した日に診察を受けることを繰り返し、その中で、もしも心臓が心配なら、心臓の専門医に診てもらった方がいいといわれました。

また父に頼んで総合病院の専門医に診てもらいました。

トレッドミルという傾斜のあるベルトコンベアーの上で歩きながら心電図をとる検査を受けましたが、途中から、医大の学生なのか研修医なのか5~6名が入ってきて、心電図を見ながら、これが何かわかるかとか医師が質問をしていました。

それで、検査のあと、医師から説明を聞いたわけですが、やはりRBBBというのがあるとのことで、その詳しい説明を受けました。

医師曰く、「死ぬような異常ではないから、別に気にすることはない。」といわれても、不安なわけで、でも、普通の人よりも寿命は短いのではないかとか聞いてみました。

すると、「人間は、生まれてきたからには何時か死ぬわけで、異常があろうがなかろうが、死ぬときには死ぬし、それが、明日なのか10年後なのかは、誰にもわからない。」とのことでした。

これは、私には、ピタリとはまり、なんか、部屋が急に明るくなった気がしました。

精神科の医師からは、精神安定剤と抗うつ剤と睡眠導入剤の処方を受けていましたし、なんといっても、生まれ育った実家での暮らしで、徐々に、食べるものも美味しく感じられるようになり、みるみる元気になっていきました。

「森田療法」の本も、両方自体は、いい加減な私には向かないような気がして、実践はしませんでしたが、ただ、本に書かれている体験談には救われました。

迷路の中を彷徨っている時には、つい、どうして自分だけがこんな苦しみを背負うのだろうかとか考えてしまうわけですが、本の中には、自分と同じような悩みを持っている人の体験談がたくさん載っているわけです。

自分とは違う症状でも、何となく、共通点が見付かるわけで、世の中には同じ悩みで苦しんでいる人たちがけっこういるんだとわかりました。

それが、2つ目の出口だったような気がします。