人生で一番つらかったのは、不安で不安でその不安に押し潰されそうになっていたことでした。
今から思えば、きっかけらしいこともあったと思うのですが、その時は、徐々に迷路に誘い込まれていく感じで、気がついた時には迷路の中でした。
迷路に入り込むと、なかなか出口も明かりも見えなくなってしまいます。
私の場合には、いろいろなストレスからの体調不良とか不眠症があったんですが、海外で暮らしていると、自分では気が付かないストレスもあるわけです。
今と違って、30年くらい前の日本でもタイでも神経症とかパニック障害とか、そんなことを知っている人はいなかったわけです。
当時、JALの片桐機長の逆噴射事故のあとから、心身症という言葉は、徐々に広まっていたと記憶します。
ですから、当時は心の病に関しては、すべて精神病という感じで、精神病といえば、ノイローゼとかキチガイといった陰口を囁かれる時代でした。
実際には、自分のいる迷路の意味がわかるまでには時間がかかり、いろいろと検査を受けて悩み、苦しかったわけですが。
突然の目まいとか息苦しさとか心臓の高鳴りを感じたら、びっくりするわけで、病院に行って検査を受けます。
検査を受けて異常なしといわれたら、一安心するわけですが、また、寝ているときに、そんなことになったら、今度こそ、死ぬんじゃないかと不安になって、救急車を呼んでしまうわけです。
それで病院に到着すると、急に正常に戻って落ち着くわけですが、一応検査を受けます。
救急車を呼んだのは一度でしたが、不安になって、病院に行ったのは、何度もありました。
精密検査を受けても異常なしといわれるから、それは何かの間違いに違いないと自分で勝手に判断をして別の病院に行って検査を受けるといった風に、迷路に入り込んでいくわけです。
そんな時に、心電図で、RBBBという先天的な異常が見付かったと医者からいわれたわけですが、なんといっても異国ですし、英語でのやりとりで、医者の説明をすべて理解できたわけでもありませんでした。
今ならネットで簡単に検索出来るし、不安もある程度は解消できたことでしょうけど、当時は、心臓に異常というのがもう心配で心配で、よけいに不安になったわけです。
まわりにも迷惑をかけてしまいましたので、それも気になるし、自分が情けなくなって、自分を責めたりもするわけです。
夜眠られない、食事が美味しくない、昼間、ウツラウツラしてしまうなどなどが症状といえば症状でした。
閉ざされた空間に入ると息苦しくなってしまうとか、ビルの高いところでは窓に近づけなくなるとか、包丁が怖くなるとか、とにかく、自分を傷つけたり、自殺してしまうのではないかと不安になっていました。
今から思えば、死ぬのが怖くて、その不安から逃げ出したくて死ぬのではないかという、おかしな心理状態だったわけです。
そんな中、日本語を話す医師から、もしかすると心の病かもしれないから、思い切って日本に帰って、日本の専門医に診てもらった方がいいと思うとアドバイスをいただきました。
これが、最初の出口だったと思います。