NHKの番組Asia Insightで「ムエタイは変われるか」を見ました。
*立ち技最強の格闘技といわれるタイの国技ムエタイ。賭博をめぐって、審判や選手へのわいろが横行し、問題となる中、主要スタジアムが、賭博を禁止する改革に乗り出した。*
今でこそ、日本でもムエタイの名が一般的になっていますが、かっては、タイ式ボクシングなどの名前で呼ばれていました。
格闘技は世界中のいろいろな国にあって、それぞれが起源を主張しているわけですが、ボクシングやプロレスのリングで戦う格闘技スタイルは、戦後に生まれたと思います。
日本には、空手や少林寺拳法や合気道ばどが古くからありますし、空手の起源はやはり中国拳法でしょう。
そんな日本の武道とタイ式ボクシングを興行として誕生させたのが、日本のキックボクシングで、日本では、1960年代から大変な人気でしたが、タイでは、タイの国技をバカにしていると、反日運動の原因の一つにもなりました。
日本の空手を起源とする韓国のテコンドーは、いろいろな混乱期を乗り越えて、国家としての海外進出を上手に行い、まさに最近のKPOPのように、まるで自分たちが生み出したがごとく、世界に宣伝し、世界から受け入れられています。
起源ということでは、最近カンボジアの方からムエタイの起源はカンボジアだとの主張も出てきています。
タイは、カンボジアのクメール文化とミャンマーのランナー文化の影響を受けているわけですが、ベトナム戦争時代に、混乱したカンボジアやラオスやミャンマーと違って、タイは、共産化することなく、欧米や日本と手を取って経済発展をしてきたことで、インドシナの文化はタイにありということを世界に広めてきたので、ムエタイだけでなく、タイ古典舞踊でもタイ料理でもタイ式マッサージでも、今から近隣諸国が起源を主張するのは大変ではないかと思います。
日本はいい意味でも悪い意味でも、国内のマーケットが大きく、海外に出なくても興行が成り立つので、どうしても海外進出が遅れがちです。
言葉の問題もあるでしょうね。
日本のキックボクシングは、その後、K1とか総合格闘技へと変化しながら、国際的な試合も行っています。
タイのムエタイは、ラジャダムヌンとルンピニーの二つのスタジアムが有名です。
ルンピニースタジアムは、その名の通り、バンコクのど真ん中ルンピニー公園の近くにあったのですが、2014年2月28日に郊外のラムイントラに移転されています。
ラジャダムヌンは、どちらかといえば旧王宮に近い官庁街にあり、ルンピニーよりも歴史が古く、最初は王室の関係もあり、格式もあります。
どちらもムエタイの試合と賭け事とは切っても切れない関係にあって、見に来ている人たちのほとんどが、試合に賭けているから、ものすごい熱気と歓声で、最初見た時は驚きました。
賭けているから、1ラウンド3分が5ラウンドある試合も、1ラウンドと2ラウンドとは、顔見世のようにあまり真剣に戦わないことが多く、3ラウンドからが本気の試合となることが多く、裏にあるいろいろな力関係で、不正も多く、トラブルも多いわけです。
ミエミエのインチキ判定もあるので、時には自動小銃の乱射とか、暗殺とか、とんでもない事件も起きてきています。
そうしたことから、スタジアムを移転させたルンピニーが、国際化をにらんで、賭け事をしないムエタイをすると宣言をしているんだそうです。
タイでは、トランプもマージャンも禁止されているくらい、賭博には厳しいお国柄ですが、競馬とムエタイだけは、賭けることが許されています。
ですから、賭け事をする人たちによって支えられてきたムエタイなのに、賭け事を禁止してしまったら、もう見に来る人がいないのではないかといわれ、実際、観客は、減っているようです。
ラジャダムヌンの方は、今まで通りやっているから、にぎわっているそうです。
今、格闘技は世界中で大人気で、アメリカのUFCやONEに代表されるように、世界中にテレビ放映されています。
ONEは、シンガポールを中心にアジア選手たちも多く試合をしていて、日本やタイからも選手が出て活躍しています。
そのONEなどと提携をして世界に出ていく選手の試合をルンピニーで興行し、外国人観光客を呼び込もうとする戦略のようです。
選手たちも、自分の実力で世界と戦って、もっと多額のファイトマネーを得ることができるということです。
タイらしさを貫くのか、グローバリズムの中で生きていくのか、タイは、いろいろな分野でこれから変わっていくのかもね。