2018年2月7日水曜日

泥棒と母親


あるところに、3人の子供を持つ未亡人がいました。

3人の子供の名前は、長男がシンで、次男がソーンで、長女はサラピーでした。

夫の残してくれた財産がかなりあったので、一家は何の心配もなく暮らすことが出来ました。何もすることがないので、母親は賭博場に出かけて、賭け事ばかりしていました。

子供たちの方は、母親もいないので、悪戯ばかりして、物を壊したり、近所の人の木からマンゴの実を盗んだりして、愉快気ままに暮らしていました。

子供たちが、家にはないマンゴの実を食べているのを見ても、母親は知らん顔でした。そればかりか、自分で自分の欲しいものを手に入れることは、大切なことだといっていました。

近所の人から、子供たちの悪戯の様子や、人のものを盗むことを言われると、母親はまさかうちの子に限ってそんなことをするはずがないと、子供たちの弁護をしました。

子供たちは、成長するにしたがって調子に乗って、悪戯も盗みもどんどんとひどくなってゆき、とうとう、ある日捕まってしまいました。

すると、母親はすぐに警察に行き、保釈金を払って、家に連れて帰り、子供たちにお説教をしました。捕まるようなことをしては駄目だよ。もっと頭を使って、捕まらないようにしないと。

子供たちは、今度は、じっくりと計画を立て、絶対に捕まらないようにと相談しました。

計画は、お金持ちの家に、まず、サラピーが、お手伝いさんとして入り込んで、家の様子とか、貴重品のある場所を探り、チャンスが来たら、二人に知らせるというものでした。

そして、家のものが、みんな外出したある日、3人はその計画を実行に移しました。

家中の金目のものを持ち出したその時に、家の主人たちが戻ってきて見つかってしまいました。家の主人が、拳銃を撃ってきたので、撃ち合いになりました。

そのうちに、騒ぎを聞いた警官も駆けつけ、銃撃戦の末、ソーンとサラピーは殺され、長男のシンも重傷を負いました。

母親は、泣きながら、息もたえだえのシンに向かって、どうしてこんなことをしてくれたのかといいました。

シンは、「いまさらそんなことを言っても、もう遅すぎるよお母さん。小さな時から、お母さんは、やっていいことと悪いこととを少しも教えてくれなかったのだから。」といって、息をひきとりました。


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