2020年5月2日土曜日

集団免疫とスウェーデン

中国の武漢から世界に広まって、たくさんの感染者や死亡者を出している新型コロナウィルスですが、国によっては、1万人を超える死亡者を出しています。

多くの国では、都市封鎖や鎖国の戦略で、とにかく、感染者を増やさないと頑張っています。

私が暮らしているタイでは、その成果もあって、このところ、新しい感染者が一桁が続いていて、そろそろ、いろいろな規制を解くときが近付いているという感じです。

世界中でみんな疲れちゃっていると思います。

そんな中、北欧スウェーデンが注目されています。

多くの人をウイルスにさらすことで、多数を自然感染させるという「集団免疫」の作戦をスウェーデンはとっているそうです。

このコラムで、筆者の鐙麻樹氏は、北欧の中で、スウェーデンとデンマークとノルウェーがほぼ同じ言語なのに対し、フィンランドとアイスランドは、全く違う言語だと書いていますが、間違いですね。

フィンランドは確かに、ゲルマン系の言語ではないけど、アイスランドの言語は、ノルウェーやデンマーク語に近くてゲルマン系です。

私は、北欧には、2年弱ほどしか滞在していませんが、デンマークに滞在中に、テレビで、スウェーデンの連続ドラマを見ました。

スウェーデンから米国に渡った開拓者の家族の物語でしたが、その中で、厳しい自然の中で、食べることが出来なくなったときに、まず老人たちが死を選び、それでも、生きていかれないときには、子供たちにも犠牲になってもらうというシーンがあったと記憶します。

スウェーデンは、老人に対して、けっこう冷たい印象でした。公園などで、老人夫婦がよく日向ぼっこをしている姿を見ました。

若者たちは、青春を謳歌し、子供のいる家族は、南欧や東南アジアへの長期バカンスを楽しんでいるイメージです。

日本人は、北欧を美化して考える人たちも多いようですが、厳しい自然と共に生きてきた人たちですから、考え方は、シビアだと思います。

それに、最近は、イスラム教徒など外国人が増え、金髪美人の国というイメージではないそうです。

要するに、国として、トリアージが、深層心理の中にとけ込んでいるイメージでしょうか。

トリアージについては、以前、いろいろと書いていますので、お時間がある方はぜひ。

日本も基本的な戦略は、最初から、感染の急増を抑えるピークカット戦略で、感染のピークを低く抑えるとともに、ピークを一日でも先延ばしする戦略で、その間に、ワクチンや治療薬の開発を待つわけです。

そして、最終的な目標は、集団感染で、国民の60%〜70%程度が感染して抗体を持てば、集団免疫が出来ると言われています。

それだけの人が感染するには、多くの犠牲も払うわけで、どれほどの人たちが命を失うのか、誰も考えたくはないわけです。

ですから、イギリスはいち早く、この戦略をやめて、都市封鎖をしたわけですが、日本は法律的なこともあって、緊急事態宣言を出したモノの、強制力も無く、罰則もないから、国民の協力に頼っているわけです。

スウェーデンも、それは同じで、国民には、感染に気をつけるように言ってはいるようです。

集団免疫戦略は、感染者が徐々に増えていくわけですし、犠牲者も出る可能性が高いですから、高齢者や持病などによって、体力や免疫力の落ちている人たちは、外出しないで、感染から守るということもやっているようです。

京都大学 ウイルス再生医科学研究所の 宮沢孝幸准教授が、言葉はきついですが、こんな事を言っています。

「収束を早めるための一つの方向性として「お年寄りと免疫が下がっている人を隔離し、50歳以下で健康な人はなるべく外に出して、感染を早めてもらうということだ。だだ、そうすることで50歳以下の人の中で亡くなる人が出てくるので、批判をかなり浴びると思う。」

ただ、宮沢孝幸准教授の個人的な考えとして、こんな事も言っています。

「遺伝的にコロナウイルスへの耐性がある人もいる可能性があると私は考えていて、そこに希望を見出している。なぜかといえば、仮に全員が同じ感受性だとすれば、理論的には6~70%との人が感染しなければ集団免疫はつかない。しかし50%くらいの人は感染しにくいということになれば、20%くらいの人が感染すれば集団免疫の効果が出て、感染拡大が収まっていくことが考えられる。」

ここで、日本人の感染者や死者が少ないことに思い至るわけです。

とにかく、都市封鎖をしても、それで完全に感染が止まるとも限らないようで、いつか、国を開いたときに、また、国外から感染者が入ってきて、集団感染の第2波第3波が来るかもしれません。

そして、経済も大変なことになっているから、なんとかしなければならないですし、結局、もしも、都市封鎖作戦で、感染を止められなかったとしたら、スウェーデン方式の集団免疫しか残されないのかもしれません。

とにかく、出来るだけ、亡くなる方が少なくなるようにと祈るだけです。