2020年2月2日日曜日

バーケンヘッド・ドリル

大ヒット映画「タイタニック(Titanic)」などで広まった、船が難破したときには、女性と子供を先に逃がして男性は後に残るという話は、実は幻想かもしれないという説もあります。

1852年に南アフリカのケープタウン近くの港から出港し、直後に沈没した英軍輸送艦バーケンヘッド号事故では女性は全員助かったが、男性の生存率は33.5%にとどまったことから、「バーケンヘッド・ドリル」とか「ウィメン・アンド・チルドレン・ファースト」とか「海の騎士道」と呼ばれる幻想が生まれたそうです。

タイタニック号では女性の70%が生き残ったのに対し、男性の生存率は20%だったそうです。

子供には未来がある、女性は子供産める男は一人でも残っていればいい

確かに一理ある考え方だと思います。

しかし、スウェーデンのウプサラ大学の経済学者、ミーケル・エリンデル氏とオスカル・エリクソン氏は、1852年以降に世界で起こった有名な海難事故18件について調査した結果、海難事故を起こした8か国、18隻の船に乗っていた計1万5142人。生存率を性別で見ると、男性の34.5%に対し、女性は17.8%だった。

1994年にバルト海で沈没し、982人中852人が死亡した客船エストニア号の事故では、男性の生存率が22%だったのに対し、なんと女性ではわずか5.4%だった。

自分の命にかかわるとっさの判断は、冷静でいられるときの判断とは違ってもおかしくはないでしょうね。

トリアージ」という考え方というか行動指針があります。

災害医療などで、傷病者の重症度と緊急度によって分別して治療や搬送の順位を決定することだそうです。

テレビなどでも実際の報道や医療ドラマなどで耳にすると思います。

具体的には 1)助かる見込みのない患者 2)軽傷の患者 3)処置を施すことで命を救える患者のように患者を分けます。

当然ですが、3)の患者を優先して救う訳なんですが、このとき、患者は完全平等で、子供が先とか女性が先とかの誰が優先という考えはないそうです。

例えば、5歳の幼児が生きていても、助かる見込みがないと判断されれば、治療すれば助かるかもしれない100歳の老人の治療が優先されるんだそうです。

日本の場合、現場で、タッグの色分けがなされているそうです。

黒(black tag) - カテゴリー0(無呼吸群)
死亡、または生命徴候がなく、直ちに処置を行っても明らかに救命が不可能なもの。

赤(red tag) - カテゴリーI(最優先治療群)
生命に関わる重篤な状態で一刻も早い処置をすべきもの。

黄(yellow tag) - カテゴリーII(待機的治療群)
赤ほどではないが、早期に処置をすべきもの。基本的にバイタルサインが安定しているもの。
一般に、今すぐ生命に関わる重篤な状態ではないが処置が必要であり、場合によって赤に変化する可能性があるもの。

緑(green tag) - カテゴリーIII(保留群)
歩行可能で、今すぐの処置や搬送の必要ないもの。完全に治療が不要なものも含む。

これを瞬時に判断することは、非常に難しいし、後々、判断が間違ってはいなかったかと悩む人も出るでしょうね。

日本にはまだ無いのですが、善きサマリア人の法(Good Samaritan laws)という法律を持つ国があって、米国やカナダやオーストラリアでは、「災難に遭ったり急病になったりした人などを救うために無償で善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ失敗してもその結果につき責任を問われない」。

日本は、EADを女性に使ったり、女児を助けようとしたりした場合に、性犯罪者と間違えられたりする、別の問題もあるようです。

現場は一刻を争うわけで、現実問題として優先順位を分ける必要はあると思うし、こちらも一理はあるとは思いますが、ちょっと違うんじゃないかと、個人的には思います。

差別だという人もいるかもしれませんが、老人より子供や若い女性だと思いますね。