2017年12月12日火曜日

ラオスの民話から  犬とロバのお話


 昔々、ある所に、一匹の犬と一匹のロバを飼っている商人が住んでいました。

 ある夜、商人が疲れて、いつもよりも早くベッドに入って寝入った後に泥棒が入って、商人の家から金目のものを盗み出そうとしていました。

 それを見たロバが、眠っていた犬を起こして、「おい、泥棒が盗みに入っているから、早く吠えて、ご主人様を起こしなさい。」といいました。

 「どうして、ご主人様のために起きだして吠えなければならないのかわからない。」と犬がロバにいいました。

続けて、「ご主人様は、俺が、欲しい食べ物はくれないし、俺のことなどかまってくれないのだから、泥棒が欲しいものを全部持っていっても、俺の知ったことではない。」といいました。

 「お前は、なんと恐ろしい醜い動物だ。」とロバが、犬に向かっていいました。「この家で、ご主人様に育てられたから、今日まで元気でいられるというのに、ご主人様が、お前を必要としているときに、お前は、ご主人様のために何もしようとしないのだから。お前が、何もしないのなら、俺が代わってやってやる。」といって、ロバは、近くにあるものを蹴飛ばして、大きな音を立てて、ご主人様を起こそうとしました。

 あまりに大きな音が、したので、ご主人様が目を覚ましましたが、その前に、泥棒もその音に驚いて、恐くなって逃げ去りました。

 ご主人様が、下に降りてきて、寝ている犬と、その近くで、周りにあるものを蹴飛ばして、大きな音を立ててているロバを見つけました。

ご主人様は、ロバに向かって、「こんな真夜中に、いったいお前は、何をしているのだ。みんなが寝ているときにそんなことをして。お前は、いったいどういうつもりなんだ。罰として、明日からしばらく、お前のような間抜けなロバには餌をやらないからな。」と怒っていいました。そして、ロバを鞭で打って、再び、二階に上がって眠りました。

 ご主人様が、二階に消えてしばらくして、眠ったふりをしていた犬が、目を開けて、ロバに向かって、「お前が、親切でした結果が、良く分かっただろう。余計なことをしたばかりに、お前は、ひどい目にあわされたのだ。これからは、自分のことだけ考えて、余計なことはしないことだな。」といいました。


Copyright(c) 1997 北風剛
無断複製、無断頒布厳禁