2021年10月2日土曜日

空気の話

小野洋子さんの「Grape Fruit」という本にある詩の中で、一番好きなのは”Air Talk" です。

It's sad that air is the only thing we share,
No matter how close we are there's always air between us.
It's also nice that air's something we all share,
No matter how far apart we are an air links us.

まだまだ続きますが、興味のある方は検索してください。

「私たちが分かちあえているものが空気だけだなんて悲しい
どんなに近付こうとしても二人の間には空気がある
我々みんなが空気を共有できているってとても素敵
私たちがどんなに離れていても私たちを空気が包んでくれる」

みたいな意味だと個人的には勝手に理解しています。

若かりし頃、この一節を好きな女性への手紙によく利用させて頂き、評判よかったです。

彼女は、この詩に曲をつけて歌ってもいます。

この曲の入った彼女の2枚組のアルバム「Approximately Infinite Universe」は彼女のマスターピースだと思いますが、例の奇声を発する歌声の評価は聴く人によって分かれると思います。

昨年、武漢初の新型コロナが大きな話題になり始めた頃、日本のある団体が中国に援助物資を贈った時に、段ボール箱に古い漢詩を書いていたことが話題になりました。

「山川異域 風月同天」

約1300年前に天武天皇の孫の長屋王が、唐の高僧・鑑真に宛てたとされる漢詩で、「住む場所は異なろうとも、風月の営みは同じ空の下でつながっている」との意味だそうです。

このメッセージに心を動かされた鑑真が来日を決め、幾度もの困難のすえに日本にやってきて、正しい戒律を日本の僧侶に教えたと伝えられているそうです。

たぶん、小野洋子さんは、この漢詩をご存じだった可能性はあるのではないかと思います。

第二次世界大戦前までの日本の知識人には漢籍、中国古典の素養がありましたから、彼女の家庭環境もそういった教養があったのではないかと想像します。


父の原付自転車に腰掛ける2~3歳の頃のわたし